脂質異常症と診断されたからといって、お菓子を一生我慢し続けなければならないわけではありません。大切なのは『何を・どう選ぶか』です。理学療法士・心臓リハビリテーション指導士のおりひくが、お菓子の種類別に脂質への影響を解説し、賢い付き合い方をご紹介します。
📋 この記事でわかること
Q. 脂質異常症でも甘いものを食べていいですか?
A. 種類と量・食べ方を工夫することで、楽しみながら脂質管理を続けることは可能とされています。完全に禁止するよりも「賢く選ぶ」習慣をつけることが継続のコツです。
Q. 和菓子と洋菓子はどちらがマシですか?
A. LDL(悪玉コレステロール)への影響という観点では、一般的に和菓子の方が洋菓子より脂質が少ない傾向があります。ただし和菓子は糖質が高く、中性脂肪には注意が必要です。
Q. ダークチョコレートは食べていいですか?
A. カカオ70%以上のダークチョコレートにはポリフェノールが含まれており、適量であれば脂質管理に悪影響が少ないとされています。ただしミルクチョコや板チョコは飽和脂肪酸が多いため注意が必要です。
脂質異常症とお菓子の関係|なぜお菓子が問題になるのか
「脂質異常症だからお菓子はNG」というイメージを持つ方は多いですが、問題になるのは「すべてのお菓子」ではなく、お菓子の中に含まれる特定の成分です。何がなぜ数値に影響するのかを理解することが、賢い付き合い方の第一歩です。

LDLコレステロールを上げるのは「飽和脂肪酸・トランス脂肪酸」
LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール、いわゆる「悪玉コレステロール」を上げる主な食事成分は、飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)とトランス脂肪酸です。飽和脂肪酸は動物性の脂肪(バター・生クリーム・ラード)に多く、洋菓子・スナック菓子に豊富に含まれています。トランス脂肪酸は植物油を加工してつくられる人工的な脂肪で、マーガリン・ショートニングを使った菓子類に含まれていることがあります。
中性脂肪を上げるのは「糖質の過剰摂取」
中性脂肪(トリグリセリド)が高い方にとっては、脂質だけでなく糖質の摂りすぎも問題です。砂糖・果糖ブドウ糖液糖などの糖質を過剰に摂取すると、肝臓で中性脂肪に変換されて血中濃度が上昇するとされています。和菓子・グミ・飴など「脂質が少ないから安心」と思われがちなお菓子でも、糖質が高ければ中性脂肪には注意が必要です。
2つの問題を菓子別に理解することが大切
脂質異常症の方がお菓子を選ぶ際は、「①LDLコレステロールへの影響(=脂質・飽和脂肪酸の量)」と「②中性脂肪への影響(=糖質の量)」の両方を意識することが重要です。次のセクションでは、5種類のお菓子をこの2軸で比較します。数値が気になる場合は、医師・管理栄養士にご相談ください。
おりひく心臓リハビリの現場では、脂質の数値が改善しない患者さんに食事記録をつけてもらうと、間食のお菓子が原因のケースが非常に多いです。ただし完全にやめるとストレスで逆に続かないので、上手な付き合い方を一緒に考えています。「何を食べるか」よりも「何をやめるか」だけを考えると続かないことが多いです。
お菓子5種類の脂質への影響を比較
和菓子・洋菓子・スナック菓子・チョコレート・グミを、LDLコレステロールと中性脂肪への影響という2つの観点で比較します。
| 種類 | 脂質 | 糖質 | LDLへの 影響 |
中性脂肪 への影響 |
賢い付き合い方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 🍡 和菓子 | 低 | 高 | 比較的小 | 注意 | 1個まで・食後より食前 |
| 🍰 洋菓子 | 高 | 高 | 大きい | 大きい | 特別な日に少量・頻度を減らす |
| 🍟 スナック菓子 | 高 | 中 | 大きい | やや大 | できるだけ避ける・小袋タイプ |
| 🍫 チョコレート | 中〜高 | 中 | 種類次第 | 種類次第 | カカオ70%以上を少量 |
| 🐻 グミ | 低 | 高 | 小さい | 注意 | 少量・食べすぎ注意 |
※個人差があります。数値が気になる場合は医師・管理栄養士にご相談ください
① 和菓子|LDLへの影響は小さいが中性脂肪に注意
あんこ・だんご・もちなどの和菓子は、バターや生クリームをほとんど使わないため脂質・飽和脂肪酸の含有量が低く、LDLコレステロールへの直接的な影響は洋菓子より小さいとされています。一方で、砂糖を大量に使うため糖質が高く、中性脂肪が気になる方は食べすぎに注意が必要です。特に饅頭・どら焼き・大福など1個あたりの糖質量は30〜40gになることもあります。食べるなら1日1個まで、食後の血糖スパイクが気になる場合は食事の後ではなく活動前(午前中の軽い活動の前など)を選ぶのも一つの方法です。
② 洋菓子|バター・生クリームの飽和脂肪酸がLDLを上げる
ケーキ・クッキー・パイ・シュークリームなどの洋菓子は、バター・生クリーム・チーズなどの動物性脂肪を多く使用するため、飽和脂肪酸の含有量が高くLDLコレステロールを上げやすいとされています。さらに砂糖も多いため中性脂肪にも影響します。脂質異常症の方にとって最も注意が必要なカテゴリーの一つです。ただし「完全禁止」にしてしまうとストレスになりかねないため、誕生日や特別なイベントのときだけ少量楽しむ、週1回以下に頻度を抑えるなどの工夫が現実的です。
③ スナック菓子|トランス脂肪酸・飽和脂肪酸が問題
ポテトチップス・コーンスナック・揚げ煎餅などのスナック菓子は、揚げ油に含まれる飽和脂肪酸や一部の製品に使われるトランス脂肪酸(食品の加工過程でつくられる油脂)がLDLコレステロールを上げる原因になるとされています。また袋を開けると止まりにくく「ひと袋食べてしまった」という事態になりやすいのも問題です。対策としては、小袋タイプを購入する・自宅に買い置きしない・食べる量をあらかじめ取り分けてから食べるなどの工夫が有効とされています。
④ チョコレート|カカオ濃度で影響が大きく変わる
チョコレートは「脂質が多いからNG」というイメージがありますが、カカオの濃度によって影響が大きく異なります。市販のミルクチョコレートや板チョコは砂糖・乳脂肪・植物性油脂が多く、LDLコレステロールと中性脂肪の両方に影響する可能性が高いとされています。一方、カカオ70%以上のダークチョコレートにはポリフェノール(フラボノイド)が豊富に含まれており、血管の機能や脂質代謝にプラスの影響があるという研究報告があります。ただしカカオが高くても脂質は含まれるため、1日25g程度(板チョコ1/4枚程度)を目安に少量にとどめることが大切です。



心臓リハビリの研究でも、ダークチョコのポリフェノールが血管の機能改善に関与するという報告があります。ただしあくまで少量が前提です。購入するときはパッケージ裏のカカオ濃度の数字を確認する習慣をつけましょう。「カカオ70%以上」が一つの目安です。
⑤ グミ|脂質は少ないが糖質の高さに注意
グミキャンディーは脂質がほぼゼロに近いため、「LDLコレステロールへの直接的な影響は少ない」とされています。「グミは脂質が少ないから大丈夫」と大量に食べてしまう方もいますが、糖質(砂糖・ブドウ糖果糖液糖)が非常に多いため中性脂肪が気になる方は要注意です。また「コラーゲン入り」「フルーツ味」などの表示があっても、糖質の量は変わりません。食べるなら1回5〜10粒を目安に少量にとどめることをおすすめします。
お菓子を楽しみながら脂質を管理するための3つのコツ
お菓子を「一切食べない」のではなく「上手に付き合う」ための実践的な3つのコツを紹介します。
① 量より頻度をコントロールする(毎日→週3回など)


1回に食べる量を少し減らすよりも、食べる回数を減らすほうが脂質への影響を抑えやすい場合があります。「毎日お菓子を食べていた」という方が週3回に減らすだけで、1ヶ月の総摂取量は約半分以下になります。いきなり「完全にやめる」のではなく、「週5→週3」「週3→週1」と段階的に減らしていくと続けやすいとされています。
② 食べるタイミングを意識する(食後より運動前・食後すぐを避ける)


同じお菓子を食べるにしても、タイミングによって体への影響が変わることがあります。食後すぐ(特に夕食後)に甘いものを食べると、食事の糖質・脂質に加えてさらに追加されるため中性脂肪が上がりやすくなるとされています。一方、午前中の活動前や軽い運動の前後に少量食べることで、エネルギーとして消費されやすい側面もあります。ただしこれも個人差があるため、医師・管理栄養士に相談しながら調整することをおすすめします。
③ 成分表示を見る習慣をつける(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の確認)


お菓子を選ぶ際は、パッケージ裏の栄養成分表示を確認する習慣をつけましょう。特に注目したいのは「脂質」の総量と「飽和脂肪酸」の欄です。一部の製品ではトランス脂肪酸の表示もあります。「脂質が少ない=安心」ではなく、糖質も一緒に確認することで脂質異常症への影響をより正確に判断できます。
- 脂質(うち飽和脂肪酸):できれば飽和脂肪酸が少ないものを選ぶ
- 炭水化物(うち糖質):1食分の糖質が15g以下を目安にすると管理しやすい
- カカオ濃度:チョコレートの場合は70%以上が目安
- 植物性油脂・マーガリン・ショートニング:成分表示にあればトランス脂肪酸に注意



完全にやめようとすると続きません。まずは食べる回数を週3回に減らすだけでも、1ヶ月で摂取量は大幅に変わります。無理のない範囲から始めることが、長期的な脂質管理の第一歩です。「減らす」ではなく「選ぶ」という意識の変化が大切だと実感しています。
食生活全体で脂質をコントロールするアプローチ


お菓子の選び方を工夫しても、食事全体のバランスが乱れていると脂質の数値改善は難しい場合があります。脂質異常症の改善には、お菓子だけでなく食事・運動・必要に応じてサプリメントを組み合わせた総合的なアプローチが重要とされています。
食事面では、EPA・DHAを含む青魚・食物繊維が豊富な野菜・豆類・大豆製品を積極的に取り入れること、揚げ物・動物性脂肪の多い食品の頻度を下げることが基本です。
運動面では、有酸素運動(ウォーキング・サイクリングなど)が中性脂肪を下げる効果があるとされています。詳しくは中性脂肪を下げる運動の記事をご参照ください。
LDLコレステロールを食事・運動で改善するための具体的な方法はLDLコレステロールを下げるには?で詳しく解説しています。
脂質異常症の全体像・基準値・原因については脂質異常症とは?LDLコレステロール・中性脂肪が高い原因と改善方法の記事で解説しています。
まとめ|脂質異常症とお菓子は「禁止」より「選択」
脂質異常症の方がお菓子と上手に付き合うためのポイントは、「禁止」ではなく「選ぶ力を身につけること」です。LDLコレステロールには飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の多い洋菓子・スナック菓子が影響しやすく、中性脂肪には糖質が多い和菓子・グミ・飴に注意が必要です。チョコレートはカカオ濃度70%以上の少量なら比較的影響が小さいという報告があります。
まずは成分表示を見る習慣・食べる回数を減らすこと・食べるタイミングを意識することの3つから始めてみてください。お菓子の管理だけでなく、食事全体・運動・医師への相談を組み合わせることが、脂質の数値を長期的に改善する近道とされています。数値が気になる場合は必ず医師・管理栄養士にご相談ください。
脂質異常症の改善には、お菓子の選び方だけでなく、食事・運動・サプリを組み合わせることが大切です。以下の記事もあわせてご活用ください。



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