健診で『血圧が高めですね』と言われたとき、その数値が140なのか160なのかによって、リスクも対処法も大きく変わります。理学療法士・心臓リハビリテーション指導士のおりひくが、血圧の数値別リスクと今すぐできる対策をわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
Q. 血圧140は危険ですか?
A. 収縮期血圧140mmHg以上はⅠ度高血圧に分類されます。すぐに命に関わるわけではありませんが、放置すると脳卒中・心筋梗塞のリスクが上がるため、生活習慣の改善が必要です。
Q. 血圧160はすぐ病院に行くべきですか?
A. 収縮期血圧160mmHg以上はⅡ度高血圧です。頭痛・めまい・動悸などの症状がある場合は早めに受診してください。症状がない場合でも、生活習慣改善と並行して医師への相談をおすすめします。
Q. 薬を飲まずに下げることはできますか?
A. Ⅰ度高血圧(140〜159)で他のリスク因子が少ない場合は、まず生活習慣の改善から始めることができます。ただしⅡ度以上(160〜)や臓器障害がある場合は、薬物療法が必要になることがあります。必ず医師にご相談ください。
血圧の数値の見方|上と下・何mmHgで高血圧?
血圧の数値は「上(収縮期血圧)/下(拡張期血圧)」で表されます。たとえば「140/90mmHg」は、上が140・下が90という意味です。どちらか一方が高い場合でも高血圧と診断されることがあります。

収縮期血圧(上)と拡張期血圧(下)の違い
収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)は、心臓が収縮して血液を全身に送り出す瞬間の血管にかかる圧力です。一方、拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)は、心臓が拡張して血液を受け入れるときの圧力で、血管が受ける最低の圧力を示します。一般的に「上の血圧」が注目されますが、「下の血圧」も動脈硬化の進行状況を示す重要な指標とされています。
高血圧の分類(正常・高値血圧・Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)
日本高血圧学会のガイドラインでは、血圧を以下のように分類しています。自分の数値がどこに当てはまるか確認してみてください。
| 分類 | 収縮期血圧 (上) |
拡張期血圧 (下) |
対応の目安 | |
|---|---|---|---|---|
| 正常血圧 | 120未満 | かつ | 80未満 | 引き続き生活習慣を維持 |
| 高値血圧 | 130〜139 | または | 80〜89 | 生活習慣の改善を開始 |
| Ⅰ度高血圧 | 140〜159 | または | 90〜99 | 生活習慣改善+医師に相談 |
| Ⅱ度高血圧 | 160〜179 | または | 100〜109 | 早めに医療機関を受診 |
| Ⅲ度高血圧 | 180以上 | または | 110以上 | 速やかに受診が必要 |
※日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」に基づく分類
おりひく心臓リハビリの現場では、家庭血圧の数値を必ず確認します。病院の数値だけでなく、朝・夜の家庭血圧が診断の重要な根拠になります。「病院では正常と言われたけど…」という方も、家庭血圧を測ってみることをおすすめします。
血圧140台(Ⅰ度高血圧)のリスクと対処法
収縮期血圧140〜159mmHgはⅠ度高血圧と呼ばれます。「まだ140台だから大丈夫」と思いがちですが、この段階から適切な対策を始めることが、将来の重篤なリスクを防ぐうえで最も効果的とされています。
放置するとどうなるか(脳卒中・心筋梗塞・腎障害のリスク)
高血圧が長期間続くと、血管に持続的な負担がかかり動脈硬化が進行します。その結果として起こりうるのが、脳卒中(脳梗塞・脳出血)・心筋梗塞・慢性腎臓病・心不全などです。血圧140台の段階では自覚症状がほとんどないため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。10〜20年単位で蓄積されるダメージが、ある日突然重大な疾患として現れることがあるとされています。
まず生活習慣の改善から始められる
Ⅰ度高血圧で、糖尿病・腎疾患・喫煙など他のリスク因子が少ない場合は、まず生活習慣の改善から始めることが推奨されています。具体的には以下の対策が有効とされています。
- 減塩:1日の食塩摂取量を6g未満に(現在の日本人平均は約10g)
- 有酸素運動:ウォーキングを週5日・1回30分程度
- 節酒:エタノール換算で男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下
- 禁煙:喫煙は血管収縮・動脈硬化を直接促進する
- 体重管理:BMI25未満を目標に
- 睡眠・ストレス管理:慢性的なストレスは交感神経を刺激して血圧を上げる
血圧を下げる運動について詳しくは、血圧を下げる運動|理学療法士が教える効果的な方法をご参照ください。食事での改善については血圧を下げる食事|今日から実践できる食べ方のコツで詳しく解説しています。
薬が必要になるケース(リスク因子が多い場合)
Ⅰ度高血圧であっても、以下に該当する場合は生活習慣改善と並行して降圧薬(こうあつやく)による薬物療法が検討されることがあります。
- 糖尿病や慢性腎臓病を合併している
- すでに心臓病・脳卒中の既往がある
- 複数のリスク因子(喫煙・脂質異常症・家族歴など)が重なっている
- 生活習慣を3〜6か月改善しても血圧が下がらない
薬を飲むかどうかは必ず医師と相談して決めてください。自己判断で服薬を開始・中止しないことが大切です。



血圧140台は『まだ大丈夫』と思いがちですが、この段階から対策を始めることが最も効果的です。10年後・20年後の心臓・脳・腎臓を守るための投資だと考えてください。私が担当する心臓リハビリ患者さんも、多くの方が「もっと早く気をつければよかった」とおっしゃいます。
血圧160台(Ⅱ度高血圧)のリスクと対処法
収縮期血圧160〜179mmHgはⅡ度高血圧に分類されます。Ⅰ度(140台)と比べてリスクが大きく上昇し、頭痛・めまい・動悸などの自覚症状が現れることもあります。この段階では、生活習慣の改善と並行して早めに医療機関を受診することが強くすすめられています。
Ⅰ度との違い・リスクが大きく上がる理由
血圧は単純な比例関係ではなく、高くなるほど臓器へのダメージが加速度的に増えると考えられています。血圧が20mmHg上昇するごとに、脳卒中のリスクが約2倍になるという報告があります。つまり血圧160台は140台と比べ、脳卒中・心筋梗塞のリスクが大幅に高い状態です。また、腎臓・網膜・心臓といった臓器障害(ぞうきしょうがい)が始まっている可能性も高まります。
生活習慣改善だけでは追いつかない場合がある
Ⅱ度高血圧では、生活習慣の改善だけで収縮期血圧を20mmHg以上下げることは難しい場合があります。減塩・運動・節酒・禁煙などを組み合わせても、1つの対策で下がる血圧は2〜5mmHg程度とされています。複数の対策を並行することで効果は高まりますが、160台の方は医師への相談を後回しにしないことが重要です。
降圧薬との併用が推奨されるケース
Ⅱ度高血圧(160台以上)の場合、日本高血圧学会のガイドラインでは原則として生活習慣改善と薬物療法の併用が推奨されています。降圧薬には複数の種類があり、患者さんの状態・合併症・副作用のリスクを考慮して医師が選択します。「薬を飲み始めたらずっと飲み続けなければいけない」と心配される方も多いですが、生活習慣が改善されて血圧が安定すれば減薬できるケースもあります。まずは医師に相談してみてください。



血圧160台になると、脳卒中・心筋梗塞のリスクはⅠ度の2〜3倍になるとされています。生活習慣の改善と並行して、必ず医師に相談してください。「薬が嫌だから」と放置していると、取り返しのつかない事態になるリスクがあります。
140と160のリスク比較表
血圧140台と160台では、リスクや対処法にどんな違いがあるのかを一覧で確認できます。
| 比較項目 | 血圧140台 (Ⅰ度) |
血圧160台 (Ⅱ度) |
|---|---|---|
| 脳卒中リスク | 正常の約2倍とされる | 正常の約4倍とされる |
| 心筋梗塞リスク | やや上昇 | 大きく上昇 |
| 自覚症状 | ほぼなし | 頭痛・めまいが出ることも |
| まず取り組むこと | 生活習慣改善 | 生活習慣改善+医師相談 |
| 薬の必要性 | リスクに応じて判断 | 必要になることが多い |
| 緊急受診の目安 | 症状があれば受診 | 早めに受診を |
※リスクは個人差があります。必ず医師にご相談ください
すぐに病院へ行くべき症状
高血圧は通常「沈黙の病気」ですが、血圧が急激に上昇したときや臓器障害が始まった場合は自覚症状が現れることがあります。以下の症状がある場合は、迷わず救急受診してください。
危険なサインのチェックリスト
- 突然の激しい頭痛(「今まで経験したことのないような痛み」)
- 視力低下・視野の欠損・目の前がぼやける
- 胸の締め付け感・胸痛
- 突然の呼吸困難・息切れ
- 手足のしびれ・麻痺・脱力感
- ろれつが回らない・言葉が出ない
- 強い吐き気・嘔吐を伴うめまい
高血圧緊急症とは
高血圧緊急症(こうけつあつきんきゅうしょう)とは、血圧が急激に上昇(180/120mmHg以上が目安)し、脳・心臓・腎臓などの臓器障害が進行している状態です。脳卒中・急性心筋梗塞・急性大動脈解離などが含まれ、速やかな降圧治療が必要な緊急状態です。「頭痛や視力の異常と同時に血圧が180を超えている」という場合は迷わず救急車を呼んでください。



これらの症状がある場合は迷わず救急受診してください。血圧が180を超えて症状がある場合は特に注意が必要です。心臓リハビリの現場でも「あの時すぐ受診していれば」という患者さんを多く見てきました。自覚症状を甘く見ないことが重要です。
血圧を下げるために今日からできること
血圧140〜160台の方が今日から始められる対策を具体的に紹介します。どれか1つからでも始めることが大切です。複数を組み合わせることで、より大きな効果が期待できるとされています。
① 減塩(1日6g未満が目標)


食塩の過剰摂取は血圧上昇の主要な原因の一つです。日本高血圧学会は1日6g未満を目標値として定めています(現在の日本人平均は約10g)。具体的な方法としては、調味料を使う量を減らす・だしや香辛料を上手に活用する・外食では汁を残すなどが挙げられます。
食事全体の見直しについては、血圧を下げる食事|今日から実践できる食べ方のコツで詳しく解説しています。
② 有酸素運動(ウォーキング30分・週5日)


有酸素運動は収縮期血圧を4〜8mmHg程度低下させる効果があるという報告があります。特に早歩きのウォーキングは、特別な道具も不要で継続しやすいのでおすすめです。急激に強度の高い運動から始めると血圧が急上昇することがあるため、最初はゆっくりしたペースから始めて徐々に強度を上げてください。
血圧に効果的な運動の種類・頻度・強度については、血圧を下げる運動|理学療法士が教える効果的な方法で詳しく解説しています。
③ 家庭血圧の測定を習慣に


毎日同じ時間に血圧を測定して記録することで、生活習慣改善の効果を数値で確認できます。朝(起床後1時間以内)と夜(就寝前)の2回測定が基本です。「仮面高血圧」のように病院では正常でも家庭では高い場合があるため、家庭血圧の記録は医師への情報提供としても非常に役立ちます。
家庭血圧計の選び方は【2025年最新】血圧計おすすめランキング5選で詳しく紹介しています。
④ 睡眠・ストレス管理


睡眠不足や慢性的なストレスは、交感神経(こうかんしんけい)を刺激して血管を収縮させ、血圧を上昇させます。特に仕事のストレスや不眠が続いている方は、血圧が下がりにくい傾向があるとされています。就寝前の深呼吸・入浴・スマートフォンを控えるなどの習慣から始めてみてください。
睡眠とストレスが血圧に与える影響については、血圧と睡眠・ストレスの関係|自律神経からの改善法で詳しく解説しています。
まとめ|血圧の数値を味方につけよう
血圧140台(Ⅰ度高血圧)は、生活習慣改善で十分対応できる可能性がある段階です。一方、血圧160台(Ⅱ度高血圧)は生活習慣の改善に加えて医療機関への相談が強くすすめられます。どちらも放置すると脳卒中・心筋梗塞・腎障害のリスクが高まるため、今日から行動を始めることが大切です。
激しい頭痛・胸痛・手足のしびれ・言語障害などの症状がある場合は、血圧の数値にかかわらず速やかに救急受診してください。また、薬を飲む・飲まないの判断は必ず医師にご相談ください。
血圧の数値が気になる方は、以下の記事で具体的な改善方法を確認してみてください。



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