患者さん健診で『糖尿病予備群』と言われたけど、まだ糖尿病じゃないし大丈夫かな……
健診で「糖尿病予備群」「境界型」と指摘されると、不安になる方も多いでしょう。しかし「まだ糖尿病ではない」と放置してしまうのは非常に危険です。
糖尿病予備群とは、血糖値やHbA1cが正常値と糖尿病型の間に位置する状態で、適切な生活習慣改善を行えば正常値に戻れる可能性が高い段階です。逆に放置すると、5〜10年以内に糖尿病へ移行するリスクが高まります。
この記事では、糖尿病予備群の定義・基準値・放置した場合のリスク・正常値に戻るための具体的な改善方法を、糖尿病療養指導士がわかりやすく解説します。
糖尿病予備群とは?定義・基準値
空腹時血糖値・HbA1cの境界型の定義


糖尿病予備群(境界型糖尿病)は、日本糖尿病学会の基準で以下のように定義されています。
| 区分 | 空腹時血糖値 | HbA1c | 状態 |
|---|---|---|---|
| 正常 | 100mg/dL未満 | 5.5%以下 | 良好・現状維持 |
| 糖尿病予備群 | 100〜125mg/dL | 5.6〜6.4% | 要注意・今すぐ生活習慣改善を |
| 糖尿病型 | 126mg/dL以上 | 6.5%以上 | 受診・治療が必要 |
空腹時血糖値が100〜125mg/dL、またはHbA1cが5.6〜6.4%の範囲に当てはまる場合が「糖尿病予備群」に分類されます。どちらか一方が当てはまるだけでも注意が必要です。
糖尿病予備群・境界型糖尿病・隠れ糖尿病の違い
「糖尿病予備群」「境界型糖尿病」「隠れ糖尿病」はほぼ同じ意味で使われる場合が多いですが、厳密には以下の違いがあります。
糖尿病予備群は一般的な呼称で、血糖値・HbA1cが正常値と糖尿病の間にある状態全般を指します。境界型糖尿病は医学的用語で、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の結果に基づいた分類です。隠れ糖尿病は食後血糖値だけが高い状態(食後高血糖)で、空腹時血糖値やHbA1cが正常でも見逃されることがあります。
いずれも放置するとリスクが高まる点は共通しており、生活習慣の見直しが重要です。
糖尿病予備群を放置するとどうなる?
5〜10年で糖尿病に移行するリスク
糖尿病予備群の方を追跡した研究では、適切な対策をとらなかった場合、5〜10年以内に約30〜50%が糖尿病へ移行することが報告されています。
一方、食事・運動・体重管理などの生活習慣改善を行った場合、糖尿病への移行率を約58%低下させることが、フィンランドの大規模研究(Finnish DPS)で示されています。予備群の段階での介入がいかに重要かがわかります。
予備群の段階から始まる血管・神経へのダメージ
糖尿病予備群は「まだ病気ではない」と思われがちですが、血糖値が高めの状態が続くだけで血管・神経への慢性的なダメージが始まっていることが明らかになっています。
高血糖が持続すると、細小血管(毛細血管)の内皮細胞が傷つき、動脈硬化が進行します。この変化は糖尿病と診断される前から進行しており、予備群の段階でも網膜症・末梢神経障害の初期変化が見られるケースがあります。
心臓病・脳卒中・腎臓病との関連
糖尿病予備群の状態は、心筋梗塞・脳卒中などの心血管疾患リスクを高めることも研究で示されています。高血糖・インスリン抵抗性・慢性炎症が重なることで、血管が傷みやすくなるためです。
また、腎臓への負担も増加し、慢性腎臓病(CKD)の発症リスクも高まります。高血圧・脂質異常症を合併している場合、これらのリスクはさらに上昇します。



血糖値が少し高いだけで、心臓病まで関係があるとは思っていませんでした……
糖尿病予備群は正常値に戻れる?
生活習慣改善で正常値に戻れる可能性が高い段階
糖尿病予備群は、適切な生活習慣改善を続けることで正常値に戻れる可能性が十分にある段階です。糖尿病と診断された後では薬物療法が必要になるケースが多いですが、予備群の段階ではまだ生活習慣の見直しだけで正常化できることが珍しくありません。



正常値に戻れるかどうかは、「いつ気づいて・いつ行動するか」が大きく左右します。予備群の段階で気づいたことは、むしろチャンスと捉えて前向きに取り組んでいただきたいです。
実際に、体重を5〜10%減らすだけでインスリン感受性が改善し、血糖値・HbA1cが正常範囲に戻ったケースも多く報告されています。
薬が必要になる前に行動することの重要性
糖尿病が進行すると、血糖降下薬(メトホルミンなど)やインスリン療法が必要になる場合があります。薬物療法には効果がある一方で、長期的な服薬コスト・副作用リスク・生活への影響もあります。
予備群の段階で生活習慣を改善し、薬が必要になる前に血糖値をコントロールすることが最も理想的な対策です。健診で指摘された今が、行動を始める最大のタイミングです。
糖尿病予備群の改善方法


糖尿病予備群の改善には、食事・運動・体重管理・睡眠という4つの柱を組み合わせて継続することが大切です。
①食事改善
食事改善は血糖値・HbA1cに最も直接的に影響します。まず取り組むべきポイントは以下の通りです。
- 食べる順番を変える:野菜・海藻→たんぱく質→炭水化物の順で食べることで、食後血糖値の急上昇(血糖スパイク)を抑えられます
- 精製糖質を減らす:白米・白パン・菓子パン・砂糖入り飲料の摂取量を意識的に減らし、玄米・全粒粉・大麦などに置き換えましょう
- 食物繊維を増やす:野菜・きのこ・海藻・豆類は食後血糖の上昇を緩やかにし、腸内環境の改善にも役立ちます
- 食事の間隔を一定に保つ:欠食・ドカ食いは血糖値の乱高下を招くため、規則正しい食事時間を心がけましょう
②運動(食後ウォーキング・筋トレ)
運動は血糖値を下げる即効性と、筋肉量を増やすことによる長期的な基礎代謝向上の両方の効果があります。
食後15〜30分以内のウォーキング(10〜15分程度)は、食後血糖値の上昇を約20〜30%抑える効果が研究で示されています。また、週2〜3回の筋力トレーニング(スクワット・腹筋・腕立て伏せ等)を組み合わせることで、インスリン抵抗性の改善が期待できます。
③体重管理
内臓脂肪の蓄積はインスリン抵抗性を高め、血糖値を上昇させる主要因の一つです。体重を5〜10%減らすだけで、インスリン感受性が大きく改善することが複数の研究で報告されています。
急激なダイエットは筋肉量の低下や栄養不足を招くため、1ヶ月あたり1〜2kgを目安にした緩やかな減量が推奨されます。食事改善と運動を組み合わせることで、無理なく継続できます。
④睡眠・ストレス管理
睡眠不足・慢性的なストレスは、血糖値を上昇させるホルモン(コルチゾール・アドレナリン)の分泌を増加させ、インスリンの効きを悪くします。
1日7〜8時間の良質な睡眠を確保し、深夜の食事・飲酒・スマートフォンの使用を控えることが大切です。ストレス対策としては、軽い運動・入浴・瞑想・趣味の時間を意識的に取り入れることで、血糖値の安定にもつながります。
何科を受診すればいい?
内科・糖尿病内科が窓口
糖尿病予備群の検査・診療は、内科または糖尿病内科が窓口になります。かかりつけ医がいる場合はまず相談し、必要であれば糖尿病専門医を紹介してもらいましょう。
健診で境界型を指摘された場合は、追加検査として75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われることがあります。この検査では空腹時・30分後・1時間後・2時間後の血糖値を測定し、より正確な状態把握ができます。
近年では管理栄養士・看護師・理学療法士・薬剤師などが連携する糖尿病療養指導チームが整備されているクリニックも増えています。継続的なサポートを受けることで、生活習慣改善の継続率が高まります。
受診時に伝えるべきこと
受診時には以下の情報を事前にまとめておくとスムーズです。
- 健診の結果票(空腹時血糖値・HbA1cの数値)
- 最近の食事・運動・睡眠の状況
- 服用中の薬・サプリメント
- 家族に糖尿病の人がいるかどうか
- 体重の増減・生活習慣の変化



「数値が少し高いだけだから大丈夫」と自己判断せず、一度きちんと受診して医師の評価を受けることをおすすめします。早期に対策を始めるほど、改善の可能性は高くなります。
生活習慣改善だけでは限界がある場合
生活習慣改善で足りない場合はサプリの活用も
食事・運動・睡眠の改善を継続しても血糖値・HbA1cがなかなか改善しない場合、機能性表示食品として科学的根拠が確認されているサプリメントを補助的に活用する方法もあります。ただしサプリメントはあくまで生活習慣改善のサポート役です。成分・コスパ・口コミについては別記事で詳しく解説しています。
まとめ
- 糖尿病予備群とは、空腹時血糖値100〜125mg/dLまたはHbA1c5.6〜6.4%の状態で、正常と糖尿病型の間に位置する
- 放置すると5〜10年以内に約30〜50%が糖尿病に移行するリスクがあるが、生活習慣改善で移行率を約58%低下させられる
- 予備群の段階でもすでに血管・神経へのダメージが始まっており、心臓病・脳卒中・腎臓病リスクも高まる
- 食事改善・食後ウォーキング・体重5〜10%減・睡眠改善の4本柱で正常値に戻れる可能性が高い
- まず内科・糖尿病内科への受診と、健診結果・生活習慣の情報を持参することが重要
血糖値の管理は食事・運動・生活習慣の総合的な取り組みが大切です。数値が高い方・糖尿病予備群と言われた方は、自己判断だけでなく必ず医師への相談・受診をお願いします。血糖値の改善方法・食事・運動などの関連情報については、以下の記事もあわせてご覧ください。






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