「血糖値が高めと言われたけど、何を食べればいいかわからない」「好きなものを全部やめなければいけないのか不安」——そうした悩みを持つ方はとても多くいます。
糖尿病療養指導士として食事指導に携わってきた経験から言うと、血糖値を下げる食事のコツは「我慢」より「置き換え」と「食べ方の工夫」にあります。正しい知識を持てば、極端な制限なく血糖値をコントロールできる可能性があります。
この記事でわかること:
- 血糖値を下げる・上げにくい食品の具体例
- 避けるべき食品とその理由(精製糖質・清涼飲料水など)
- 食べる順番・タイミングなど実践的な食べ方のコツ
- 緩やかな糖質制限(ロカボ)の効果と注意点
- 食事改善がなかなか続かない方のためのヒント
患者さん健診でHbA1cが6.3と言われました。食事を改善しようと思っても、ラーメンや揚げ物が大好きで何から手をつければいいかわからなくて…。
好きな食べ物を一切やめる必要はありません。「何を増やすか」「何を減らすか」を知ることが第一歩です。血糖値・HbA1cの基準値から確認したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
血糖値と食事の関係——なぜ食事が大切なのか
血糖値は食事内容に直接影響を受けます。「何を」「どれだけ」「どんな順番で」食べるかによって、食後血糖値の上がり方は大きく変わります。
食後血糖値が上がる仕組み
食事で摂取した糖質は消化・吸収されてブドウ糖となり、血液中に流れ込みます。これにより血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されてブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込み、血糖値を下げる働きをします。
問題になるのが「血糖値スパイク」と呼ばれる急激な血糖値の上昇です。精製糖質の多い食事や早食いをすると、食後に血糖値が急上昇し、インスリンが過剰分泌されます。このような急激な変動が繰り返されると膵臓に負担がかかり、糖尿病のリスクが高まると言われています。
GI値(グリセミック指数)とは何か
GI値(グリセミック指数)とは、食品を摂取したときの血糖値の上がりやすさを数値化した指標です。GI値が低い食品ほど血糖値の上昇が緩やかで、膵臓への負担が小さいとされています。
- 低GI食品(GI55以下):玄米・そば・オートミール・ほうれん草・ブロッコリー・大豆・ナッツ類など
- 高GI食品(GI70以上):白米・食パン・うどん・じゃがいも・清涼飲料水・菓子類など


血糖値を下げる・上げにくい食べ物


以下の食品は血糖値の上昇を緩やかにするか、血糖管理に有効と言われています。毎日の食事に少しずつ取り入れることから始めてみましょう。
①野菜・きのこ・海藻(食物繊維が豊富)
野菜・きのこ・海藻に豊富に含まれる食物繊維は、腸内で糖質の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。また腸内環境を整えることでインスリン感受性の改善にもつながると言われています。
- 葉物野菜:ほうれん草・小松菜・キャベツ・レタス(低カロリーで食物繊維が豊富)
- きのこ類:しめじ・えのき・しいたけ・まいたけ(低カロリー・食物繊維豊富)
- 海藻類:わかめ・昆布・めかぶ(水溶性食物繊維のアルギン酸が豊富)
②青魚・大豆製品(良質なタンパク質)
タンパク質は糖質に比べて血糖値への影響が小さいため、積極的に摂ることが推奨されます。特に青魚はEPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸を含み、インスリン感受性の改善や炎症抑制効果が期待されています。
- 青魚:サバ・イワシ・サーモン・アジ(EPA・DHAが豊富)
- 大豆製品:豆腐・納豆・豆乳・おから(大豆イソフラボンが血糖改善に関わるとの報告あり)
- 鶏むね肉・卵:低脂質で良質なタンパク質を効率よく摂れる
③玄米・全粒粉(低GI主食)
主食を白米・白パンから玄米・麦ごはん・全粒粉パンに切り替えることで、GI値が下がり食後血糖値の上昇が緩やかになります。最初から完全に切り替えるのが難しければ、白米に麦を混ぜる「麦ごはん」から始めるのが現実的です。
- 玄米:GI値55(白米GI値84と比較して大幅に低い)
- 麦ごはん(白米+押し麦):最初の切り替えとして取り組みやすい
- 全粒粉パン・オートミール:朝食の主食として有効な選択肢
④乳製品(血糖値への影響が小さい)
牛乳・ヨーグルトは血糖値への影響が比較的小さく、食事のはじめに飲む牛乳が食後血糖値の上昇を抑えるという研究報告があります。ただし加糖ヨーグルトや市販のフルーツヨーグルトは糖質が多いため、プレーン(無糖)を選ぶことが大切です。
⑤ナッツ類(間食に最適)
素焼きのナッツ類(アーモンド・くるみ・カシューナッツなど)は食物繊維・良質な脂質・タンパク質をバランスよく含み、血糖値の急上昇を起こしにくい間食として優れています。食前に少量(10〜20粒程度)食べると、その後の食事による血糖値上昇を緩やかにする効果も期待できます。カロリーが高いため食べすぎに注意が必要です。
| 分類 | 食品例 | 血糖値への影響 |
|---|---|---|
| 積極的に摂りたい | 野菜・きのこ・青魚・豆腐・玄米・ナッツ | 上昇が緩やか・血糖管理に有効 |
| 適量を心がける | 白米・果物・乳製品・アルコール(少量) | 量・タイミングに注意が必要 |
| できるだけ避ける | 清涼飲料水・菓子類・白パン・揚げ物・加工食品 | 血糖値スパイクを起こしやすい |
血糖値を上げる・避けるべき食べ物


血糖値に悪影響を与える食品を知ることも大切です。以下の食品は血糖値スパイクを引き起こすだけでなく、高血圧・脂質異常症など他の生活習慣病のリスクも高める可能性があるため、できるだけ控えることが推奨されます。
①精製糖質(白米・白パン・菓子類)
白米・白パン・うどん・菓子類などの精製糖質は、食物繊維やミネラルが取り除かれているため消化・吸収が速く、食後血糖値を急激に上昇させます(血糖値スパイク)。毎日の主食を低GI食品に置き換えるだけでも、血糖値改善に大きな効果が期待できます。
②清涼飲料水・果糖入り飲料
コーラ・スポーツドリンク・缶コーヒー(加糖)などの清涼飲料水は、液体のため固体食品より吸収が速く、血糖値スパイクを起こしやすいです。「果汁100%なら安心」は誤解で、果糖は肝臓で中性脂肪に変換されやすく、血糖値だけでなく中性脂肪値も上昇させる可能性があります。
飲み物で血糖値を上げないためには、水・緑茶・麦茶・ブラックコーヒー(無糖)を基本にすることが大切です。
③アルコール(特にビール・日本酒)
アルコールと血糖値の関係は複雑です。ビール・日本酒・甘いカクテルは糖質が多く血糖値を上げます。一方でアルコール自体は肝臓での糖新生(ブドウ糖を作る働き)を抑制するため、空腹時や服薬中の方では低血糖リスクがあります。インスリンや血糖降下薬を使用している方は特に注意が必要です。
④加工食品・揚げ物
揚げ物・加工食品(ハム・ソーセージ・インスタント食品など)には「隠れ糖質」が多く含まれていることがあります。また製造過程で生じるトランス脂肪酸はインスリン抵抗性を高め、心血管リスクを上昇させると言われています。外食では揚げ物より蒸し・焼き・煮た料理を選ぶ習慣をつけることが改善につながります。



ラーメン・揚げ物・缶コーヒーが毎日の習慣だったんですが、血糖値が8.2まで上がってしまって。カロリーより「糖質の質」が問題だとわかってから、食品の選び方が変わりました。
血糖値を上げにくい食べ方のコツ


「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか」も血糖値コントロールに重要です。同じ食材でも食べる順番・速さ・タイミングで食後血糖値の上がり方が変わります。
①食べる順番(ベジファースト)


食事を「野菜・海藻 → タンパク質(魚・肉・豆腐) → 主食(ご飯・パン)」の順番で食べることを「ベジファースト」と呼びます。食物繊維を先に摂ることで腸内でゲル状の物質が形成され、後から食べる糖質の吸収速度が緩やかになります。
- 最初にサラダや汁物(野菜入り)を食べる
- 次に主菜(魚・肉・卵・豆腐など)を食べる
- 最後にご飯やパンなどの主食を食べる


②食事のタイミング・回数
食事を抜くと次の食事で一度に大量の糖質が吸収され、血糖値が急激に上昇します(欠食→ドカ食い)。3食を規則正しく食べることで血糖値の変動を小さく抑えられます。また夜遅い食事は血糖値が上がりやすく、翌朝の空腹時血糖にも影響することがあります。
③ゆっくりよく噛んで食べる
早食いは消化・吸収が速くなり、血糖値スパイクの大きな原因のひとつです。よく噛むことで消化酵素の分泌が促進され、血糖値の上昇が緩やかになります。1口あたり30回を目安に噛む習慣をつけると、食後血糖値の上昇を抑えられると言われています。また満腹感を得やすくなり、食べ過ぎの防止にもなります。
④食後の軽い運動との組み合わせ
食後15〜30分後に10〜20分の軽いウォーキングをするだけで、食後血糖値の上昇を効果的に抑制できることが複数の研究で示されています。運動中は筋肉がブドウ糖を消費するため、インスリンなしでも血中のブドウ糖が取り込まれる仕組みが働きます。



食後すぐにソファに座るのをやめて、10〜15分でも散歩する習慣をつけた方が、HbA1cが0.5%下がったケースを何人も見てきました。食事改善と運動を組み合わせると相乗効果があります。
糖質制限は有効?注意点は?
1食あたりの糖質量を40g以下に抑える「緩やかな糖質制限(ロカボ)」は、食後血糖値の改善に有効であることが研究で示されています。特定の食品を禁止するわけではなく、「糖質を減らしてタンパク質・食物繊維で補う」という考え方です。
ただし極端な糖質制限には以下のリスクがあります。
- ケトン体の過剰産生:脂質代謝が過剰になりケトアシドーシスのリスクがある(特に1型糖尿病の方)
- 筋肉量の低下:タンパク質が不十分なまま糖質だけ減らすと筋肉が分解されやすくなる
- 栄養不足・脂質の過剰摂取:糖質の代わりに飽和脂肪酸の多い食品を多く摂ると心血管リスクが上昇する可能性がある
インスリンや血糖降下薬を服用中の方が糖質制限を行う場合は低血糖のリスクがあります。食事内容を大きく変える際は必ず担当医に相談してください。
食事だけでは限界がある場合
食事改善は血糖値コントロールの基本ですが、運動・睡眠・ストレス管理と組み合わせることでより大きな効果が期待できます。食事だけで思うように血糖値が改善しない場合は、生活習慣全体を見直すことが重要です。
食後血糖値の変化を自分で確認したい方には、家庭用血糖値測定器を活用する方法もあります。
食事改善の効果を数値で見える化することで、モチベーション維持にもつながります。
生活習慣改善で足りない場合はサプリの活用も
食事改善を継続しても血糖値・HbA1cがなかなか改善しない場合、機能性表示食品として科学的根拠が確認されているサプリメントを補助的に活用する方法もあります。ただしサプリメントはあくまで生活習慣改善のサポート役です。成分・コスパ・口コミについては別記事で詳しく解説しています。
まとめ
- 野菜・青魚・玄米・ナッツなどの低GI食品を積極的に取り入れることで、血糖値の上昇を緩やかにできる
- 精製糖質・清涼飲料水・加工食品・揚げ物は血糖値スパイクを起こしやすいため、できるだけ控えることが大切
- ベジファースト(野菜→タンパク質→主食の順番)・ゆっくり食べる・食後の軽い運動を組み合わせると効果が高まる
- 緩やかな糖質制限(ロカボ)は有効だが、服薬中の方や極端な制限は必ず医師に相談する
- 食事改善だけでなく運動・睡眠改善・サプリの補助的活用も組み合わせるとより効果的
血糖値の管理は食事・運動・生活習慣の総合的な取り組みが大切です。数値が高い方・糖尿病予備群と言われた方は、自己判断だけでなく必ず医師への相談・受診をお願いします。血糖値の改善方法・食事・運動などの関連情報については、以下の記事もあわせてご覧ください。






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