「善玉コレステロール(HDL)が低いと言われたけど、どうすれば上がるの?」「LDLを下げることはわかるけど、HDLを上げるにはどうすればいいの?」——そんな疑問をお持ちの方は多いと思います。
HDLコレステロールは、血管に蓄積した余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ「コレステロールの掃除屋」です。HDLが低いと、LDLが正常でも動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞のリスクが高まります。
この記事では、理学療法士・認定理学療法士(スポーツ)として生活習慣病の改善に関わってきた経験をもとに、HDLコレステロールを上げるための食事・運動・生活習慣の具体的な方法を科学的根拠とともに解説します。
患者さん健康診断でHDLが38mg/dLと言われました。LDLは正常なのに、HDLだけ低いのはなぜですか?どうすれば上がりますか?
HDLコレステロールとは?なぜ重要なのか
HDLコレステロールは単なる「善玉」という言葉だけでは伝わらない、血管の健康を守る重要な働きを持っています。まずその基本と、低い場合のリスクを確認しましょう。
HDLの正常値・低HDL血症の基準
HDLコレステロール(High-Density Lipoprotein)は「善玉コレステロール」とも呼ばれ、血管壁に蓄積した余分なコレステロールを肝臓へ回収・処理する役割を担っています。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、HDL 40mg/dL未満が「低HDL血症」と診断されます。
| HDL値(mg/dL) | 判定 | リスク |
|---|---|---|
| 60以上 | 理想的 | ✓ 心血管リスク低下効果あり |
| 40〜59 | 正常範囲 | ✓ 問題なし |
| 40未満 | 低HDL血症 | ✗ 動脈硬化・心血管リスク上昇 |
HDLが低いとどうなるか


HDLが低い状態が続くと、血管壁にコレステロールが蓄積しやすくなり動脈硬化が進行します。LDLが正常範囲であっても、HDLが40mg/dL未満の場合は心筋梗塞・脳梗塞のリスクが正常者の1.5〜2倍程度高まるとされています。また、HDL低値はメタボリックシンドロームの診断基準のひとつでもあります。
HDLコレステロールが低い原因


HDLが低くなる原因は大きく6つに分けられます。自分に当てはまる原因を確認することが、改善への第一歩になります。
運動不足
運動不足はHDL低下の最大の原因のひとつです。有酸素運動にはHDLを産生する酵素(リポプロテインリパーゼ)を活性化させる働きがあり、運動習慣がある人はない人に比べてHDLが5〜10mg/dL程度高いという報告があります。現代人の生活は座位時間が長く、意識的に体を動かさなければHDLは下がり続けます。
喫煙
喫煙はHDLを低下させる最も強力な要因のひとつです。タバコに含まれる有害物質がHDLの産生を妨げ、HDLの機能を低下させます。禁煙するだけでHDLが3〜5mg/dL程度上昇することが複数の研究で示されています。
肥満・内臓脂肪の蓄積
内臓脂肪が増えると、中性脂肪が高くなりその代わりにHDLが低下するという関係が生じます(中性脂肪とHDLは逆相関)。BMI25以上の肥満では低HDL血症の頻度が顕著に高く、体重を5〜10%減らすだけでHDLが改善するケースも少なくありません。
トランス脂肪酸・精製糖質の過剰摂取
マーガリン・ショートニングに含まれるトランス脂肪酸は、LDLを上げるだけでなくHDLを下げるという「二重の悪影響」を持ちます。また白米・白パン・砂糖などの精製糖質の過剰摂取も、中性脂肪を上げてHDLを低下させます。
アルコールの影響(適量と過剰の違い)
アルコールは適量(1日1〜2ドリンク程度)ではHDLをわずかに上昇させる可能性が示されていますが、過剰摂取は中性脂肪を急上昇させてHDLを下げます。飲酒はHDL対策として積極的に推奨できるものではなく、飲む場合は節度を守ることが前提です。
遺伝・体質
家族性低HDL血症など遺伝的にHDLが低い体質の方も存在します。生活習慣を改善してもHDLがなかなか上がらない場合は、遺伝的要因を考慮して医療機関での精密検査を受けることをおすすめします。
HDLコレステロールを上げる方法①:運動


有酸素運動がHDLを上げるメカニズム
有酸素運動はHDLを上げる最も効果的かつ科学的根拠の豊富な方法です。運動により筋肉でのエネルギー消費が増加すると、血中の中性脂肪が分解されます。この過程でHDLの前駆体となる物質が増加し、結果としてHDL値が上昇します。また運動は肝臓でのHDL産生を促進する酵素活性を高める作用もあります。
HDLを上げるための具体的な運動処方
認定理学療法士(スポーツ)として、HDL改善に効果的な運動処方を以下に示します。
| 項目 | 推奨内容 |
|---|---|
| 運動の種類 | ウォーキング・ジョギング・水泳・サイクリング(有酸素運動) |
| 強度 | 中等度(会話ができる程度の息切れ)最大心拍数の50〜70% |
| 時間・頻度 | 1回30分以上・週3〜5回(週150分以上が目標) |
| 効果が出る期間 | 3〜6ヶ月継続でHDL 3〜10mg/dL程度の上昇が期待できる |
運動量が多いほどHDL上昇効果が高まる傾向があります。ただし急に激しい運動を始めると関節・筋肉への負担が大きくなるため、最初は「1日30分のウォーキング」から始めて徐々に強度・時間を上げていくことをおすすめします。
HDLコレステロールを上げる方法②:食事
食事でHDLを上げるポイントをおさえて、何を食べるか・何を控えるかを具体的に確認しましょう。
積極的に摂りたい食品
HDLを上げる食事のポイントは、「良い脂質を摂る」「悪い脂質・糖質を減らす」の2軸です。
- オリーブオイル(エクストラバージン):一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)がHDLを維持・上昇させる。地中海食研究でHDL改善効果が確認されている
- 青魚(サバ・イワシ・サンマ):EPA・DHAがHDLを上げ、中性脂肪を下げる。週2〜3回を目標に
- ナッツ類(くるみ・アーモンド):不飽和脂肪酸・食物繊維・ポリフェノールが脂質代謝を改善。1日ひとつかみ(約30g)が目安
- 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳):大豆イソフラボン・大豆タンパクがLDLを下げHDLを維持する
- 食物繊維(野菜・きのこ・海藻・オートミール):腸内環境を改善してコレステロール代謝を助ける
- アボカド:一価不飽和脂肪酸が豊富でHDL上昇に役立つとされる
避けるべき食事
- トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング):LDLを上げてHDLを下げる「最悪の脂質」。加工食品・菓子パン・市販の揚げ物に多い
- 精製糖質の過剰摂取:白米・砂糖・清涼飲料水は中性脂肪を上げてHDLを下げる
- 過剰なアルコール:適量(1日1ドリンク)を超えると中性脂肪上昇・HDL低下につながる
HDLコレステロールを上げる方法③:生活習慣
食事・運動に加えて、生活習慣の見直しもHDL改善に大きく寄与します。特に禁煙の効果は即効性が高く、最も優先すべきアプローチのひとつです。
禁煙の効果
喫煙者はHDLが非喫煙者より平均5〜10mg/dL低いとされています。禁煙するだけで数週間〜数ヶ月でHDLが3〜5mg/dL程度上昇することが確認されており、HDL対策として最も即効性が高いアプローチのひとつです。禁煙補助薬・禁煙外来の活用もおすすめです。
適度な飲酒について
赤ワインに含まれるポリフェノール(レスベラトロール)がHDLを上昇させる可能性は研究されていますが、現時点では「飲酒を積極的に推奨する」エビデンスは不十分です。飲む場合は1日1ドリンク(ビールなら350ml程度)以内に抑え、週2日以上の休肝日を設けることが基本です。
睡眠・ストレス管理
睡眠不足や慢性的なストレスはコルチゾールを増加させ、HDLの産生を抑制します。7時間前後の質の高い睡眠を確保し、入浴・深呼吸・軽いストレッチなどでストレスを解消する習慣を身につけることが、HDL改善の土台となります。
どのくらいで効果が出る?改善までの期間の目安
HDLは食事改善だけでは上がりにくく、運動習慣の定着が最も重要です。各アプローチの効果が出るまでの目安を以下に示します。
| アプローチ | 期待できる改善幅 | 効果が出るまでの目安 |
|---|---|---|
| 有酸素運動(週150分以上) | 3〜10mg/dL上昇 | 3〜6ヶ月 |
| 禁煙 | 3〜5mg/dL上昇 | 数週間〜3ヶ月 |
| 体重5〜10%減量 | 2〜5mg/dL上昇 | 3〜6ヶ月 |
| 食事改善(良い脂質・食物繊維増加) | 1〜3mg/dL上昇 | 1〜3ヶ月 |
| これらの組み合わせ | 5〜15mg/dL上昇も可能 | 3〜6ヶ月 |



HDL改善で最もよく聞かれる質問が「食事を変えるだけで上がりますか?」というものです。正直に言うと、食事だけでのHDL改善は限定的です。HDLを上げるには運動が不可欠で、特に有酸素運動を週150分以上継続することが最も効果的です。まずはウォーキング30分から始めてみてください。
HDLだけ上げても不十分な理由


HDLを上げることは重要ですが、LDLの管理・中性脂肪の管理と合わせた総合的な脂質管理が心血管疾患の予防には不可欠です。過去には「HDLを薬で上げれば心血管リスクが下がる」という仮説のもと薬剤開発が進められましたが、HDLを人工的に上昇させる薬の多くは心血管イベントの減少につながらなかったという報告があります。
つまり重要なのは「HDLの数値を上げること」ではなく、「HDLが機能する健康な状態を作ること」です。運動・食事・禁煙・体重管理という生活習慣の改善が、HDLの質と機能を高めることにつながります。
脂質の総合的な管理・サプリメントの活用を検討したい方は以下をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. LDLは正常なのにHDLだけ低いのはなぜですか?
LDLとHDLは別々のメカニズムで調整されるため、LDLが正常でもHDLが低いケースは珍しくありません。HDLが低い主な原因は運動不足・喫煙・内臓脂肪の蓄積・トランス脂肪酸の摂りすぎです。特に座りがちな生活・喫煙習慣がある方はHDLが低くなりやすい傾向があります。また遺伝的に低い体質の方もいます。まず運動習慣の導入と禁煙から取り組むことをおすすめします。
Q2. HDLを上げるのにどのくらいの期間がかかりますか?
アプローチによって異なりますが、禁煙は数週間〜3ヶ月で効果が現れやすく、有酸素運動(週150分以上)は3〜6ヶ月の継続でHDLが3〜10mg/dL程度上昇することが期待できます。食事改善だけでは改善幅が1〜3mg/dL程度と限定的なため、運動との組み合わせが重要です。焦らず3〜6ヶ月を目安に継続しましょう。
Q3. HDLが低くてもLDLが正常なら問題ありませんか?
問題があります。HDLが40mg/dL未満の低HDL血症は、LDLが正常範囲であっても心筋梗塞・脳梗塞のリスクが1.5〜2倍程度高まるとされています。HDLは血管内の余分なコレステロールを回収する役割を担っており、HDLが低いとこの「掃除」機能が低下します。メタボリックシンドロームの診断基準にもなっており、放置せず生活習慣の改善に取り組むことが大切です。
Q4. 食事だけでHDLは上がりますか?
食事改善だけでのHDL上昇は1〜3mg/dL程度と限定的です。HDLを上げるには有酸素運動が最も効果的で、食事改善との組み合わせで5〜15mg/dL程度の改善も期待できます。食事では、オリーブオイル・青魚・ナッツ類などの良い脂質を積極的に摂り、トランス脂肪酸・精製糖質・過剰なアルコールを避けることがポイントです。食事は「運動の効果を高める補助」として位置づけるとよいでしょう。
まとめ
- HDL40mg/dL未満は「低HDL血症」で動脈硬化・心血管リスクが上昇する
- HDLが低い主な原因は運動不足・喫煙・肥満・トランス脂肪酸・精製糖質の過剰摂取
- 有酸素運動(週150分以上)がHDLを上げる最も効果的な方法で3〜10mg/dL上昇が期待できる
- 食事では良い脂質(オリーブオイル・青魚・ナッツ)を増やし、トランス脂肪酸・精製糖質を減らす
- 禁煙・体重管理・睡眠改善も組み合わせることで相乗効果が期待できる
- HDLの数値を上げるだけでなく、LDL・中性脂肪も含めた総合的な脂質管理が心血管疾患予防の本質
脂質異常症の管理は食事・運動・生活習慣の総合的な取り組みが大切です。数値が気になる方・改善が難しい方は、自己判断だけでなく必ず医師への相談・受診をお願いします。LDLコレステロール・中性脂肪・HDLの改善方法などの関連情報については、以下の記事もあわせてご覧ください。







コメント